第13部
(4)エコタウン 再利用で「負の遺産」生かす

田中商店水俣営業所でリユースされる焼酎の5合瓶。洗浄が終わると、焼酎メーカーに戻る=18日、水俣市
 茶色い焼酎の五合瓶がコンベアの上を流れていく。ラベルをはがし、飲食店キープ用の白い書き込みを消し、洗浄まで終わると醸造元へ。再び焼酎を詰め、酒屋や飲食店の店頭に並ぶ。  リサイクル産業が集積する水俣市の「エコタウン」の一角に、田中商店水俣営業所がある。年間約三百五十万本のガラス瓶を洗い、リユース(再利用)出荷する。二〇〇一(平成十三)年に熊本市から水俣市に進出して以来、環境モデル都市づくりの中核を担う。工場には、年間約三千人の見学者が訪れる。

 「静脈産業」。自社の取り組みを、専務の田中利和さん(53)はこう例える。焼酎や酒のメーカーが“心臓部”だとすれば、中身が空になった瓶を「新品」にして心臓に戻すことで、「消費の過程で生じる環境への負荷を減らし、雇用や環境教育の場も生み出すことができる」というわけだ。

 瓶類の総合卸会社だった田中商店のエコタウン進出は十三年前、田中さんが牛乳パックの再利用運動に携わったことがきっかけ。水俣市の仲間からマーマレード瓶のリユースを持ち掛けられた。「牛乳パックを洗って開いて乾かす。モノを大切にして、使い捨てを見直す。本業の瓶で、次のステップに進みたいと思った」と振り返る。

 水俣の地も魅力的に映った。「水俣病の歴史は重い。地域に多くの課題を積み残してもいる。その『負の遺産』は無視できないが、逆に大きくプラスに振れる可能性を秘めている。国内外にリユースの取り組みをアピールするとき、九州や熊本より『ミナマタ』の方がブランド力は大きい」

 同社は〇四年四月、五合瓶のリユース率を上げるため、醸造元約二百四十社がある熊本など南九州三県をエリアに、従来よりも強度を高くした「統一リユース瓶」事業に乗り出した。瓶の肩口に刻まれた「R」の文字が目印だ。

 真っ先に導入した鹿児島県大口市の「大口酒造協業組合」は現在、出荷する五合瓶すべてを「R瓶」に替えた。R瓶焼酎の出荷量は初年度百三十万本だったのが、〇六年度は百六十六万本に増加。回収率も15%から23%まで上がり、賛同する他メーカーも増えているという。

 瓶を洗って、何度も使う。これは、一升瓶では当たり前だった。それが紙パックやワンウエイ瓶の登場により、消費者の選択肢が増えた半面、環境には負荷がかかる結果を生んだ。

 R瓶の取り組みを、同組合専務の向原英作さん(48)は「焼酎メーカーから卸店、小売り店を経て消費者、収集して瓶商で再利用、という昔からあった環境保全システムの再構築」と位置付ける。「差し支えなければ、瓶入りを選んでほしい。消費者の意識変化も大事だと感じる」

 水俣市の居酒屋では、同組合の主力商品「黒伊佐錦」が目立つ。飲み終わった瓶は、市民が中をすすいで、ルールを守って分別収集。雨が入らないようにふたをして、割らずに運ぶ。そして田中商店で生き返る。「リユースは、一人一人の市民に支えられている」。田中さんの実感だ。

 事務所のテーブルに、リユースしたワイン瓶に球磨焼酎を入れた新商品が置かれていた。「フランスのワインを飲む。瓶を洗って焼酎入れて、今度はフランスで飲んでもらう。そんなリユースの仕組みをつくれないだろうか」。田中さんは瓶の向こうに、国際環境都市「ミナマタ」の未来と自らの夢を重ねる。

熊本日日新聞2007年5月28日朝刊

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